エスプレッソの他の抽出方法にない特徴、それは圧力です。圧力を使うことによって少ない量のお湯で、大量のコーヒー成分を豆から抽出することが特徴です。
エスプレッソマシンの中でお湯に力をかけているものはポンプです。そして極細に挽いたコーヒー粉がその力に抵抗することで、バスケット内に圧力が生まれるという構造です。詳しくはエスプレッソ用グラインダーについて書いたこちらの記事をご参照ください。
Over Pressure Valve(OPV)とは、エスプレッソ抽出中にかかる圧力を一定にコントロールするための部品です。一定の圧力を超えた時に弁を解放して圧を逃すことで、狙った圧力以上に上がらないようにします。名前の通り、Over(過剰)なPressure(圧力)を逃すValve(弁)です。これがないと圧力はどこまでも上がって(ポンプの限界まで)いってしまいます。
構造
もう少し詳しく構造を図解していきます。基本的にはどのマシンでも似たような構造をしていると思いますが、一応私の持っているGaggia Classic Proの構造を参考にしています。
エスプレッソマシンをざっくり図にすることこんな感じです。
上から、水を溜めておくタンクがあり、そこから水を吸い上げてボイラーに送り込んでいくポンプがあります。ポンプとボイラーの間に今回の主役OPVがいます。でその先にボイラーがあり、バスケットにつながっていきます。
図では水色は圧力のかかっていない水。青色がポンプが圧力をかけている水を表しています。
OPVは結構シンプルな構造で、穴があり、そこにスプリング(バネ)が弁を押し込むことで穴を塞いでいます。
マシン内の圧力が狙った圧力より低い時は、水の圧力がスプリングの力に負けているのでバルブが開かず、マシン内の圧力が上がっていきます。
そうすると、ポンプはどんどん水を送り込んでマシン内の圧力が上がっていきます。
狙ったレベルより圧力がかかった状態の水をオレンジで示しました。
この状態になると、水の圧力がスプリングの力を上回り、スプリングを圧縮しバルブを解放して、水が抜けていくことができます。(OPVを抜けるとタンクに戻っていきます)
水が抜けると当然マシン内の圧力が下がるので、またスプリングが広がりバルブを閉じます。
このバルブ開閉が繰り返されることで、マシン内の圧力とスプリングの力がバランスする状態になります。
このように、OPVのスプリングの強さでマシン内の圧力の上限をコントロールすることができるのです。
実物の見た目
Gaggia Classic Proを解体して、OPVを観察してみました。
マシンを開けるとこんな感じになっています。
ポンプの出水側から2本のパイプが出ています。上側の透明パイプがOPVの先についているパイプ、下側のオレンジ色のパイプがボイラーに繋がるパイプですね。
パイプを見るだけでかかる圧力がみて取れます。ボイラーへ続くパイプには圧力がかかるのでがっしりとしたパイプが使われております。OPVの先につくパイプには圧力がかかることはありません。なので透明のビニールパイプが使われています。
ではOPVをさらに解体して中を見てみます。
金色の部品を捻って外すことができます。外すと中にスプリングが出てきます。これで圧力を調整しているのですね。
残念ながらこれ以上は解体できないのでバルブはちょっと見ることできませんでした。
なぜ必要?
エスプレッソに圧力が重要と言っても、圧力が高ければ高いほど良いわけではありません。
圧力が高すぎると、コーヒー粉が耐えきれずパック中にChannel(穴・亀裂)ができてしまいます。Channelはそこだけお湯が流れやすくなってしまうので均一な抽出の天敵です。
他にも圧力がかかりすぎて、コーヒー粉のパックが圧迫されて、お湯が抜けなくなる現象なども起きます。
要するにエスプレッソ抽出に適切な圧力というものがあるのです。なので上がりすぎないようにOPVで制御して狙った圧力で安定させてあげることが非常に重要になります。
エスプレッソの理想の圧力とは?調整できる?
エスプレッソ抽出に最適な圧力というのは色々な意見があるので、決まった答えがあるものではありません。
クラシックなイタリアンエスプレッソには15Barぐらいが使われています。
モダンなエスプレッソでは9Bar程が最適と基本的には言われています。
高ければより抽出中にコーヒー粉から二酸化炭素が溶け出すのでクレマが多くなったりします。低い方がChannelingの回避に有効です。理論的には圧力が高い方が抽出に使える力が大きくなるので高い抽出度を得られそうですが、このChannelingの問題でそう簡単にはいきません。
Gaggia Classic Proはイタリア産のマシンであるだけあって、メーカーサイトに15Barと明記しています。
最近ではこれが高すぎるという人が多く、OPVスプリングを入れ替えることで改造し9Barに調整するという人が多いです。(私も今度トライしてみます。)
マシンによっては調整機能付きOPVが搭載されているものもあります。そのようなマシンだとネジを回すだけで圧力調整が可能です。こちらで紹介したECM CASA Vなどはこの機能があります。
ちなみにエスプレッソでの圧力はBarという単位が使われます。ほぼ1Bar=1気圧(atm)です。
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