私の購入したエスプレッソマシンGaggia Classic Pro、しばらく使ってきたわけですが、中身がどうなっているのか気になってきました。
ということで今回はGaggia Classic Pro (SN035Rモデル)の回路の動作をなるべくシンプルに解説していきたいと思います。
では、早速回路図から! (この時点で戻るボタン押されてしまうかもしれませんが。。。笑)
結構ネット上にGaggia Classic Proの回路図は公開されています。代表としてWhole Latte Loveさん(アメリカのエスプレッソマシン販売店)が作られているサポートWikiにこちらの素晴らしい回路図があります。
各部品が見たまんまの絵になっており、非常に分かりやすい。配線もちゃんと色が書かれており、物理的にどう繋がっているかが分かりやすいものになっています。解体して配線を治す時とかには非常に役に立つと思います。
ただですね、見て分かる通り結構複雑なんですよね。。。本当にマシンを開けたまんまの配線になっているので、正直どうやって回路が動作しているのかを理解するには非常に苦戦します。
そこで、こちらの回路図をベースにして、配線を整理し、配置も分かりやすくして、どういう感じで回路が動いているのか分かるように回路図を作り直してみました。
私の回路図は物理的ではなく、電気的に構造が分かるようにすることが目的です。
Whole Latte Loveさんの回路図よりは怖くないかなと思いますが、いかがでしょうか。でも電気的には等価の回路図になります。配線の色も一応キープしています。ただしアース線(Yellow/Green線)は機能を説明する上ではあまり関係ないので削除しています。(と言っても接続しなくていいと言っているわけではないですよ。)
かなりオタクな内容になっていくかと思いますが、一歩ずつ説明していきます。
(一応、私電気系のエンジニアなので理解しているつもりですが、微妙に違っているところとかあるかもしれません。ご容赦ください。説明を簡略化するために端折っている説明も多いです。私と同じく電気系の人には、おいおい違うだろ、と思われる方もいるかもしれませんが、それが分かる=ご自分で正確な動き理解できているという事だと思いますのでお任せします。)
電源 OFF 状態
まずは電源OFFからいきましょう。
回路図一番左の電源スイッチ(Power Switch)がOFFの状態ですね。
コンセントから繋がっているAC電源がスイッチで切り離されている状態で、マシン内には電気が流れていない形になります。
各部品に電流流れないので、何も起きないと。簡単ですね。
抽出用 加熱状態
電源を入れると、エスプレッソ抽出のための温度までボイラーを加熱していく状態になります。
この状態では、電源スイッチはON、抽出スイッチ(Brew Switch)とスチームスイッチ(Steam Switch)はOFFになります。ボイラーはまだ冷たい状態です。
電源スイッチを入れることで、マシン内部に電流が流れます。オレンジの線に電流が流れることになります。
ざっくり説明として、部品に電流が流れれば部品が活性化すると考えてください。例えば電源ランプ(PowerLamp)の両端のワイヤーがオレンジになっているので、電流が流れ、ランプが点灯します。(ヒーターだけちょっとそうシンプルな話ではないですが後に説明します。)
過加熱センサー(Over Temp)はボイラーが熱くなりすぎないようにチェックしている安全部品です。通常なるはずのない184℃以上になると、回路を遮断します。普通に使っている分には何もせず常に電流を通す部品です。
スチーム用温度センサー(Steam Temp)と抽出用温度センサー(Brew Temp)はボイラーがそれぞれの基準以下の温度の時に電流を流します。なのでボイラーが107℃以下の場合は両方のセンサーが電流を流している状態になります。
こうなることでヒーター(Heater)に電流が流れ、ボイラーが加熱されていきます。
スチームランプ(Steam Lamp)と抽出ランプ(Brew Lamp)も両端オレンジになるんじゃない?と思われた方もいるかもしれません。確かに両方オレンジのところに繋がっているのですが、ランプは電流にとって抵抗のある流れにくい道になります。(光るっていう仕事をしなきゃいけないからですね)なので、温度センサーという楽な道が繋がっている状態ではランプに電流は流れず、消灯したままになります。
抽出準備 完了状態
ヒーターがしばらくボイラーを加熱していくと抽出温度に到達します。
この状態では電源スイッチはON、抽出スイッチ(Brew Switch)とスチームスイッチ(Steam Switch)はOFFになります。ボイラーが抽出温度より高く、スチーム温度より低い状態です。
ボイラー温度が抽出温度以上になると、抽出用温度センサーが反応して電流を遮断します。
そうすると今まで通れていたセンサー経由の楽な道がなくなるので、電流は仕方なく抽出ランプの方に流れます。そうなることで点灯します。
先ほど書いた通り、ランプは抵抗の高い道なので、ここを通ってしまうとヒーターを動かす分の力がなくなってしまい、ヒーターが停止します。(正確にいうと、回路抵抗が上がるため、電流が減りヒーターのパワーがなくなる)
ヒーターが止まると当然ボイラー温度はゆっくり下がっていきます。抽出温度センサーがまた反応するレベルまで落ちると抽出用加熱状態に戻るわけです。この2状態を行き来することで抽出用の温度にボイラーを保っています。
抽出状態
ボイラーが温まったら、抽出スイッチを押してエスプレッソを入れていきます。
この状態では電源スイッチはON、抽出スイッチ(Brew Switch)はON、スチームスイッチ(Steam Switch)はOFFになります。ボイラーはスチーム温度より低い状態です。(抽出温度よりは、高かったり低かったりします。)
抽出スイッチ(Brew Switch)をONすると、真ん中あたりの経路がつながります。これによりポンプ(Pump)とソレノイドバルブ(Solenoid Valve)が動作します。
ソレノイドバルブが活性化すると、ボイラーからグループヘッドへのお湯が流れる経路が開きます。そこにポンプの稼動することで貯水タンクからボイラーに水を送り込んでいきます。ボイラー内のお湯は押し出されてグループヘッドへと向かうことになります。
ちなみにこの抽出状態では、ボイラー温度によって抽出温度センサーがONかOFFになります。(図ではボイラー温度が抽出温度より高く、ランプが点灯し、ヒーターはOFF状態を示しています。)
抽出スイッチをOFFしエスプレッソ抽出を止めると、抽出用 加熱状態または抽出準備 完了状態に戻ります。
スチーム用 加熱状態
続いてスチームしたい場合は、スチームスイッチ(Steam Swtich)をONします。
この状態では電源スイッチはON、抽出スイッチ(Brew Switch)はOFF、スチームスイッチ(Steam Switch)はONになります。ボイラーはスチーム温度より低い状態です。
スチームスイッチをONすることで、抽出温度センサーを無視する状態になります。また迂回経路ができるので抽出ランプにも電流が流れず消灯します。
これによってスチーム用温度センサー(SteamTemp)によりボイラーの制御がされることになります。スチーム温度より低い場合はセンサーが電流を流す経路になり、ヒーターがONします。
スチーム準備 完了状態
最後にスチーム用にボイラーが加熱し切った状態になります。
この状態では電源スイッチはON、抽出スイッチ(Brew Switch)はON、スチームスイッチ(Steam Switch)はOFFになります。ボイラーはスチーム温度より高い状態です。
スチーム用温度センサーが回路遮断するので、スチームランプの方に電流が流れ点灯します。ランプにパワーを持っていかれるのでヒーターはOFFします。
ここでヒーターがOFFすることで、ボイラーがどこまでも加熱していくことを防いでいるわけです。
ちなみに、スチーム中というのは回路的には別の状態があるわけではありません。単純にこの状態でスチームバルブを開くと、ボイラーに閉じ込められていたスチームがスチームワンドから自分の圧力により抜けていく感じです。
オマケ:スチームワンドからお湯状態
ここまでに基本的によく使う状態は見てきましたが、一個全部のスイッチONした時はどうなるのか気になりませんか?
回路図を見ていけば結構簡単に分かります。
スチームスイッチがONになると、2つのことが起きます。ヒーターがスチーム温度までボイラーを加熱していくことと、ソレノイドバルブが必ずOFFになりボイラーからグループヘッドの通路を塞ぎます。
抽出スイッチをONにすると、先ほどの用にポンプが動作を始めます。
ではこうなると、何が起きるか。ボイラーからはどこにもお湯もスチームも抜ける経路がありません。その状態でポンプで新しく水をどんどんボイラーに押し込んでいく状態になります。まぁ正直あまり意味のある状態ではないですね。(細かくいうと、ボイラー内の圧力が上がっていき、圧力が上がりすぎるとOPVが解放され貯水タンクに水が戻っていきます。)
でもこの状態でスチームバルブを開くとボイラー内のスチームとお湯の抜ける道ができるので、スチームワンドからお湯が出てきます。
アメリカーノとかを作るときに便利かもしれませんが、私はシンプルに抽出状態でグループヘッドからお湯を出した方が楽だと思いますね。
最後までお付き合いいただきありがとうございます!
通常電化製品って、半導体という脳にあたる部品を使って色々な部品の制御を行うのですが、Gaggia Classic Pro (他のエスプレッソマシンも似たような構造が多いと思いますが)はスイッチのON/OFFだけで直接全ての部品を狙った状態にしている回路になってます。クレバーな回路構造になっているなというのが私の感想です。このようなシンプルな回路にすることで、コストが下げられたりメンテナンス性が良かったりするメリットがあります。
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