OPV : Over Pressure Valveとは、エスプレッソマシンの抽出時にかかる圧力を調整する重要な部品です。
こちらの記事で動作原理について詳しく解説しましたので、まずはこちらから読んでいただくと今回の話がより深くわかると思います。
なぜそもそも調整したいのかということについても解説しています。
ということで、原理解説を読んでいただいた方も、原理はどうでも良いんだという方も、こちらの記事ではOPVを改造することでエスプレッソマシンの圧力を変更する方法を紹介します。
調整原理は簡単で、OPVのバルブにかかるバネの力を調整してあげれば、抽出時にかかる圧力を調整できます。
OPVにはざっくり、調整ネジタイプと固定タイプの二種類があります。それぞれで調整方法が異なります。
・調整ネジタイプは、単純に調整ネジを回してあげれば圧力が変わります。
・固定タイプは、中に入っているバネを入れ替えることで圧力を変えられます。
調整ネジタイプ
調整ネジタイプのOPVは元から圧力調整ができるように作られているOPVです。
代表的なところで言うと、Rancilio Silviaがこの調整ネジタイプのOPVを内蔵しています。
こちらのタイプは割とシンプルにOPV内のバネの長さをネジの締め具合によって調整できるようになっています。
ネジを締めて、バネを短くすれば、当然のことバルブにかかる力が強くなり、結果抽出圧力が上がります。
逆にネジを緩めれば、圧力を下げられます。
元々、調整することを想定して作られているものなので、非常に簡単です。
固定タイプ
固定タイプのOPVは、基本的には圧力調整を想定していないOPVになります。
ですが、改造をすることで圧力調整をすることが可能です。この改造というのが、中のバネを取り替えてしまうことになります。
このタイプの代表的なマシンが私の使っているGaggia Classic Proになります。
こちらはバネの取り替えなので、改造という領域に入ってきて、この改造のことを OPV MODと呼びます。(OPVのModificationのこと)
強いバネに入れ替えれば、圧力が上がります。
弱いバネを入れれば、下がります。
OPV MODやってみる
ではGaggia Classic Proの改造しているところを写真で見ていきます。
改造と言ってもやることは割と簡単です。
まず、マシンを開けます。上部の奥にあるネジを2つ外せば天板が外れます。
注意:絶対の電源は抜いてください! スイッチOFFだけではダメですよ!また、使った直後だとボイラーなど熱いので、しばらく使っていない時にやった方がいいです。
開けると、OPVが見えます。これですね。黒い部分がOPVです。
取り付けられているパイプをねじったり、引っ張ったりして外します。この時にOPV側の根本をしっかり持って下にあるポンプにダメージがないようにお気をつけください。
あとはレンチで金属パーツを外します。
そうすると、目的のバネが出てきます。
このバネを入れ替えればOKです!
どんなバネを入れればいいのか?
OKです!じゃねーよ!って思った方、すみません。その通りです。
バネを選ぶのがこの改造の非常に難しいところで、私も悩みました。
一般的な方法は、Gaggia Classic Pro のOPV MOD専用でバネのセットが売られているのでそれを買って入れ替えることです。
有名なのがこちらのSHADES of COFFEEさんのものですね。
ただ問題は、ただのバネ3つの価格がなんと2000円越え。。。しかもイギリスのショップさんなので、送料を含めると3000円以上。。。ちょっと馬鹿らしくて私は手が出せませんでした。
ということで、私は自分でバネを調達してみることにしました。
まず出てきたバネを測ってみると、外径 7mm、長さ24.5mm、線径は1mm or 0.8mm程でした。
ならば、外径7mmのバネを買って、自分で長さを切ってバネの力を調整すればいいと。
ということで、楽天でこちらのバネを購入。(私の記事を参考にしてやってみようと思われている方は、このリンクから全く同じものを購入いただくのが安全かと思います。もし違うものを購入するなら、外径は7mmぴったりでお願いします。この前に近くのホームセンターで7.5mmとかいけるだろと思って買ったものは入りませんでした。。。)
10本入りで送料込み900円弱。安くはないけど、まぁセットを買うよりは安い。
バネの調整
購入したバネは、外径7mm、長さ45mm、線径0.8mmのものです。
当然これを無理矢理入れ替えたら力強すぎて、圧力爆上がりです。
今回は、Gaggia Classic Proの標準設定の15Barを、モダンエスプレッソの定番9Bar付近に調整することが目的ですので、バネをカットして力を弱めていきます。
では一体どれだけカットすればいいのか?
ベストな方法は圧力ゲージを購入して、バネをカットしつつ、9Barになる長さに調整することです。
ただここでも問題が。圧力ゲージが高い!3000〜4000円程度します。(送料抜きで)
これも海外ショップではエスプレッソマシンのポルタフィルタに取り付けられる圧力ゲージが売っていますが、日本では私の探した限り売っていない。。。
考えた結果私は自分でバネの圧力を測って調整することにしました。
正確かどうか非常に疑問が残るところではありますが、方法共有します。
ちなみに先に結論だけ言っておくと、私が購入したバネを19.5mmにカットすると大体9Barになっているのではないかと思っています。(圧力ゲージを買っていないので確証は全くありませんのでその点ご承知おきを。)
調整方法詳細
ではこれにたどり着いた方法ですが、道具はコーヒーを淹れる人なら誰でも持っているスケールを使います。
まず、OPVの中でバネがどの長さまで圧縮されているのかを測りました。
これは15.5mmまで圧縮されていると計測+計算できました。
次に、元々入っているバネが15.5mmになっている時にどれだけの力を持っているのかを測ります。
こんな感じで金属パーツにマステを貼って、面位置までバネを押し込むと丁度15.5mmになるような道具を作り、スケールに押し込んで重さを測りました。
結果は、オリジナルのバネは約1100gの力がかかっていると分かりました。
で、Gaggia Classic Proはデフォルト15Barに調整されていることを信じると、比例計算で660gの力をかけられれば9Bar相当になるはずです。
あとは購入したバネを切っては、スケールに押し込み測定、また切るを繰り返し、15.5mmの時に660gになる長さを探しました。結果が19.5mm。
このバネ切る時に注意点です。ニッパーで切ろうとすると、ステンレスの0.8mm線は強すぎて、ニッパーが逆にダメージを受けて切れません。。。精密ニッパーをダメにしてしまいました。。。ペンチの線切り部分を使ってください。
ということで、色々と苦労しましたが、9Barになる(はず)のバネを手に入れました!
これをOPVに入れて完成です。
(3000円で素直に買った方がよかったのでは?とか言わないでください。。。)
念の為おかしなことになっていないことを確認するために、エスプレッソ抽出時にOPVから水が出てくることを確認してくださいね。
タンクに入っているパイプのうち短い給水ではないほうのパイプ。エスプレッソ抽出中にここから水が出てこればOKです。出てこない場合はOPVが強くなりすぎて、マシン内ぶの圧力が逃がせず上がりすぎている可能性があります。
9Bar OPV MODの効果は?
デフォルトの状態と、OPV MOD後の状態でエスプレッソを淹れてみました。
まずデフォルト状態。圧力高すぎる弊害の一つと言えるChannelingによって、そこそこカップの周りにエスプレッソが飛び散ってます。
そして9Bar MOD後。
たまたまこの回が調子良かっただけかもしれませんが、飛び散りがかなり軽減されていることが分かると思います。この後も何回か淹れていますが傾向は変わらず、飛び散りは減った気がします。
圧力が想定より下がってしまっていると、クレマができなくなったりするはずですが、今回そこも問題なく同じぐらいの量のクレマができました。一点気づいたのはクレマの色が薄めで、均一になったこと。これはいいのか悪いのかはわかりませんが。
味に関しては、OPVのバネ入れ替えにそこそこ時間がかかる(ボイラー冷めるのを待つ必要ある)ので、並べて飲み比べはできませんでしたが、えぐみが減ってより甘みが出ている気がしました。(もちろん豆の量・挽き目設定などは同じで)
正直、自分で良くなったと思いたいだけでそのように感じている可能性もありますが、まぁ極論自分が美味しいと思えるものに近づいたならそれが正解なんです。自分でしか飲まないので。自己満足こそが最終目的です。笑
もしご興味あればお試しあれ。
コメント
いつも楽しく拝見させていただいております。私も先日、gaggia同機種のOPVSpringの改造を行いました。当たり前ですが、、、こもりコーヒーさんのような知見がないため、Modキットを海外で購入しております。
これからも色々参考にさせていただきます。
かめさん、コメントありがとうございます!
私はケチなだけなので、Modキットが正解だと思います。(正直、何Barになっているか分かりませんので。。。)
改造していかがでした?
浅煎りシングルオリジン豆で初めてお店に近い味が出せました(安定して出せませんが、、、笑)。味がクリアーになってくれたのではないかと思ってます。
いいですね!浅煎りはやはり難しいですよね。。。